藤巻胃腸科内科クリニック
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不慮の事故で急逝した青年医師の追悼集です。




































































腸の炎症性病変

1.腸の炎症
 腸の病気というと大腸がんやポリープをまず思い浮かべますが、小腸や大腸はリンパ組織が発達しており、炎症の多い臓器です。代表は食中毒や感染で起こる細菌性・ウイルス性腸炎で、下痢・嘔吐・腹痛という症状は激烈ですが、普通は1週間ほどで完治します。腹痛の代表である急性虫垂炎(いわゆる盲腸炎)やこれと類似した症状を示す憩室(けいしつ)炎も多い病気です。

 内視鏡検査の対象になる急性腸炎では、主に抗生物質による薬剤性腸炎や血管の詰まりによる虚血性大腸炎が有ります。症状が長引く慢性の腸炎で代表的なのが、潰瘍性大腸炎とクローン病という病気です。この他、アメーバ赤痢、腸結核、放射線性腸炎等も慢性の症状を示します。

大腸憩室:腸
壁の筋の弱い
所が凹んでい
ます


2.潰瘍性大腸炎
 大腸の粘膜に炎症を起こす病気で、症状は持続する下血・下痢・腹痛です。病変は直腸から口側に連続して広がりますが、小腸までは及びません。原因は不明ですが、腸の慢性炎症の中では一番多い病気です。若年から発症し、発症年齢のピークは20歳代です。治療は内科的薬物療法が有効ですが、ストレス・疲労等で再発を繰り返すことが多い病気です。発病から10年以上経過した全大腸に及ぶタイプでは一般の人よりがんが合併しやすい傾向が有ります。大量出血が有り内科的治療が無効な重症例と、がんが発生した場合では手術になることもありますが、多くは内科的にコントロールが可能です。

潰瘍性大腸炎
の内視鏡写真


3.クローン病
 本病も原因不明で、主に大腸と小腸に全層性の炎症を起こします。症状は腹痛・発熱・下痢・栄養障害・貧血・痔など多彩で、症状だけではなかなか診断出来ません。潰瘍性大腸炎に比べると患者数はかなり少ないものの、発症年齢は10歳代後半から20歳代に多く、より若い傾向が有ります。治療は症状が強いうちは消化に負担のかからない栄養剤中心の食事が有効です。薬物療法も含めた内科的治療でも炎症が強く腸が狭くなると、最低限の外科治療を行うことも有ります。この病気も症状の状態に合わせて食事制限に強弱を付け、コントロールすることになります。

クローン病の
内視鏡写真


4.薬剤性腸炎
 A.偽膜(ぎまく)性腸炎
 抗生物質の治療を長く受けた人で、腸内にクロストリジウム・ディフィシルという菌が繁殖し毒素を産生し、激しい下痢が持続します。主に高齢の人や元々病気がちの人に発症します。治療はそれまで続けていた抗生物質を中止し、この菌に有効な抗生剤を投与します。
 (右写真:直腸から黄白色の偽膜が付着。)
 
 B.急性出血性腸炎
 ペニシリン等の抗生物質で誘発され、自分の腸内の細菌のバランスの乱れやアレルギー反応が原因と言われています。症状は血性の下痢と腹痛で、健康な若い人でも発症します。原因の抗生物質を中止することが第一です。
 (右写真:発赤した粘膜からにじみ出る様な出血あり。)

 C.消炎鎮痛剤による潰瘍
 関節痛・頭痛等の痛み止めの長期内服で、小腸や大腸に潰瘍が出来ることが有ります。症状が乏しく、出血や原因不明の貧血で見つかることも有ります。
 (右写真:大腸の経過が長い潰瘍で引きつれもあり。)
偽膜性腸炎


急性出血性腸



消炎鎮痛剤に
よる潰瘍


5.虚血性大腸炎
 大腸の血管が詰まり、大腸に縦長の潰瘍が発生する病気です。症状は急激な腹痛と下血で、動脈硬化の強い人や便秘の強い人に発症します。絶食で点滴での栄養補給を続けることで改善してきます。
縦長の潰瘍

6.アメーバ赤痢
 以前は開発途上国の病気で国内の感染はほとんど有りませんでしたが、最近は国内での感染が増えてきました。細菌性赤痢とは違い、急激な発症ではなく、徐々に下痢が始まり次第に血性になってくるのが一般的です。組織からのアメーバの検出か血液のアメーバ抗体検査で診断を確定します。診断が付けば、アメーバに有効な抗生物質が著効します。
出血とむくみ
が散在


7.腸結核
 新たな発症は少ないのですが、盲腸を中心に横長の潰瘍を作る傾向が有ります。肺結核と同じ抗生物質が有効です。昔、肺結核に罹った人で潰瘍のあとを見ることも有ります。
横長の潰瘍

8.放射線性腸炎
 腹部の放射線治療受けた人で、放射線をかけた部位の腸管に慢性の炎症を起こすことが有り、出血しやすいのが特徴です。難治性です。

9.粘膜脱症候群
 排便時「いきみ」の強い人で、直腸にポリープ状の隆起や潰瘍を作る病気で、組織をとり顕微鏡で診断が付きます。治療はとにかく排便時の「いきみ」をやめることです。(右の写真はポリープ状の隆起を作るタイプです。)


写真は全て院長の経験例です。