藤巻胃腸科内科クリニック
医院写真


 特別リンク
不慮の事故で急逝した青年医師の追悼集です。















































































胃・十二指腸潰瘍

潰瘍(かいよう)とは? どこにできやすいか?
 潰瘍(かいよう)とは粘膜にできたキズのことです。胃とその奥の十二指腸の始まり(球部)に多く発生します。欧米では十二指腸に、日本では胃に多くみられます。また、若年では十二指腸や胃角に多いのですが、高齢になると胃の上部の胃体部にできやすくなります。内視鏡(カメラ)写真左の白色・類円形の部位が潰瘍で、その周りがむくんでいます。右は潰瘍の治癒期の写真で、発赤とひきつれがみられます。
胃潰瘍の内視鏡写真
胃の部位

潰瘍の原因は?
 従来は胃酸などの粘膜を攻撃する因子と、粘液や血流など粘膜を守る因子バランスのくずれが原因と言われていました(天びん学説:十二指腸潰瘍では胃酸の出すぎが、高齢者の潰瘍では粘膜を守る因子の低下が主因)。
 近年、胃内に生息するヘリコバクター・ピロリという菌(以下、ピロリ菌)が、重要な攻撃因子であることが分かりました。日本人の高齢者の70%がこの菌をもっており、ピロリ菌のいる人が必ず潰瘍を作るわけではありませんが、ピロリ菌を除くと潰瘍が再発しにくいことがわかっています。
 ピロリ菌の除菌療法が平成12年から医療保険の対象になり、潰瘍の患者さんではピロリ菌の有無を検査し、陽性の場合は原則として除菌療法を行います。ただし、上記のように潰瘍の原因はピロリ菌だけではありませんので、除菌成功後も、1割前後の人に再発があります。
天秤の絵天びん学説 ピロリ菌ピロリ菌

潰瘍の症状・合併症
 主な症状はみぞおちの痛みで、空腹時に強い傾向があります。食欲不振、吐き気、胸やけも多い症状です。合併症で最も多いのは出血で、吐血がなくてもタール状の黒い便は大量出血の症状ですので、直ちに治療が必要です。以前は手術になることが多かったのですが、内視鏡(カメラ)による止血治療の発達で、ほとんど内科で治るようになりました(緊急内視鏡)。内視鏡写真左のように潰瘍内に出血源の太い血管(矢印)を見つけた場合は、右のように内視鏡を通して止血剤を血管に注射したり、血管を焼いてつぶしたり、クリップをかけたりして、再出血を予防します。しかし、潰瘍が深すぎすっかり穴があき(穿孔:せんこうといいます)、腹膜炎を起こしたときには手術が必要になる場合があります。また、何度も潰瘍を繰り返すと、特に十二指腸で中が狭くなり(狭窄:きょうさくといいます)、通過障害を起こすことがあります。右のX線写真の矢印は狭窄した十二指腸球部です。
 現在、下記のように潰瘍の治療は進んでいますので、症状のある場合は我慢しないで、合併症が起こる前に治療を受けるようにしましょう。
内視鏡的止血
十二指腸潰瘍狭窄

潰瘍の治療
 胃酸の分泌を強力に抑える薬が登場し、短期間に治すことが可能になりました。薬を始めるとほとんど1週間以内に症状がなくなりますが、ここで薬を中断すると潰瘍の悪化や難治化の原因になりますので、完全に治るまで飲み続ける必要があります。(写真左は十二指腸球部の約半分を占める巨大潰瘍でしたが、1カ月半で写真右のように治癒し、その後も再発はありません。)
 この胃酸を抑える薬は潰瘍になりやすい体質そのものを治す薬ではありませんので、再発予防には
ピロリ菌の除菌治療が大切です。除菌療法はピロリ菌が陽性であることを確認した後、2種類の抗生物質と胃酸を強力に抑制しピロリ菌を抑える薬の3剤を1週間続けて内服します。治療終了後、1カ月以上の期間を空けてピロリ菌が陰性化したかどうかの検査を行います。第1次の除菌の成功率は約70%前後ですが、平成19年より第2次除菌(抗生物質の種類を変更)も医療保険で可能になり、成功率は90%以上と良好です。
 ただし、前述のように除菌成功例でも10%程度に潰瘍の再発があります。かぜの解熱剤や頭痛・歯痛・関節痛などの痛み止めの薬が一番要注意です。この他、ストレスを極力避け、コーヒー、炭酸飲料などは胃の刺激になりますので避けましょう。

潰瘍とがん
 以前は、胃潰瘍からがん化すると考えられていましたが、現在は否定されています。ただし、良性の胃潰瘍と区別しにくいがんがあり、一度の検査では分からない可能性があります。潰瘍が開いているうちは、生検(胃がんの特集を参照)でもがんが検出されにくいため、潰瘍が治癒した段階で再検査する必要があります。また、一度生検でがんを否定された場合でも、潰瘍の経過観察中にがんの疑いがはっきりしてくることもありますので、年に一度の内視鏡検査をお勧めします。(十二指腸はがんのできにくい部位ですので、十二指腸潰瘍ではがんの心配はまずありません。)
早期ガン早期ガン2 潰瘍とよく似た早期胃がん:矢印1の部位にわずかな出血があったため繰り返し精密検査を行ったところ、潰瘍が治った時期に矢印2の部位だけがん細胞が検出され、診断がつきました。

内視鏡写真は全て当院のものです。