A  使用テキストについて

 

和賀郡稗貫郡志和郡巡礼札所御詠歌

 

岩手県立図書館所蔵

 

分類//哲学・宗教/宗教/雑纂/

16-47

 

筆者名 小原延次郎

大正15年(1926)

刊本

和装本

 

いわゆる当国巡礼札所三十三カ所の御詠歌の木版本である。

 

当国巡礼札所三十三カ所が何時頃形成されたのか、定かではない。安政7年(1778年)に成立したと書いてあるものがあるが、根拠不明。「邦内郷村志」巻7二子県太田村の項に「清水観音」が一番札所と記載されている。この本を書いたといわれる大巻秀詮は享和元年(1801年)五月十一日歿とのことなので、それ以前には成立していたことは確かであろう。

御詠歌を作った人物についても未詳である。慈覚大師が寺の開基で御詠歌も慈覚大師が作った、と、寺の記録にあるところもあるようだが、今の段階では説得的ではない。

いずれにせよ、かなりのレベルに歌の素養のある人が、各観音堂の具体的知識を持って作ったものだろう。私見だが江戸以降の作が多いような気がする。作者が単数か複数かも不明。

 なお、巡礼ガイドに印刷されているご詠歌と多少の相違がある場合があるが、今回はテキストの解読が主目的なのでテキスト文に従った。特に、23番高木寺の場合が気になる。

 

 

 

慈覚大師円仁

延暦13(794)下野国都賀郡に生まれ、大同3年(808)15歳で比叡山に登って伝教大師最澄の弟子となった。承和5年(838)遣唐船で唐に渡り、承和14(847)帰国した。貞観6年(864)71歳で没した。その2年後の貞観8年(866)、生前の業績を称えられ、円仁に日本で初の大師号・慈覚大師の諡号(しごう)が授けられた。

関東以北には、日光山埼玉県川越市の喜多院、福島県伊達郡の霊山寺、松島の瑞巌寺、山形市の立石寺岩手県平泉町の中尊寺、毛悦治越寺石鳥谷の五大堂、秋田県象潟町の蚶満寺、青森県恐山の円通寺など、慈覚大師が開祖(または中興)とされる寺が数多くあり、立石寺のある山形県においては、山形市の柏山寺など10を越える寺を開いている。これは、慈覚大師が長6年(829)から天長9年(832)まで東国巡礼の旅に出、この折に、天台の教学を広く伝播させたことが大きな基盤となっている。

慈覚大師円仁が開山したり再興したりしたと伝わる寺は関東に209寺、東北に331寺余とも言われているそうだ。

B 本文

(注)左側は原文どうり、右側は読みやすくするため、同じ歌を一部漢字化しています。

一番 本尊 十一面 太田村 清水寺

 

はやいそけ 御法の道を        早いそげ 御法の道を

 きよミつに めくり          清水に 巡り

あふたの 月を見んため        太田の 月を見んため

 

二番 本尊 せんじゅ 円万寺村 円満寺

 

松杉も 法を             松杉も 法を

ときハの えんまんし         常葉(説は)の 円満寺

のちのよかけて            後の世かけて

   たのミそめたき          頼み 染め滝

 

三番 本尊 十一めん はせ堂村 長谷寺

 

うたかひも なしや          疑いも 無しや

 つくりし 罪消て           つくりし 罪消て

はせの閼井に             長谷の閼井に

 浮ふ身のかけ             浮かぶ 身の影

 

四番 本尊 十一めん 志和片寄村 小金堂

 

彼の岸に 舟            彼の岸に 舟

 こかねたう 来て見れハ   漕がねどう(黄金堂)来て見れば

ここそ極楽             ここぞ極楽

 よそなたつねそ           他所 な 訪ねそ

 

五番 本尊 正観音 似内村 新山堂

 

みのりとく 新山もとに       実り疾く 新山もとに

 来てみれハ 松に          来て見れば 松に

藤波さきかかるころ         藤波 咲きかかる頃

 

六番 本尊 せんしゆ 南日詰村 嶋の堂

 

出て見よ はなのさかりハ      出てみよ 花の盛りは

 しまのたう             嶋の堂

大悲擁護の             大悲擁護の

 かすみたなひく           霞たなびく

 

七番 本尊 十一面  郡山二日町 高水寺

 

ゆきとほみ さらに         雪遠見 さらに

 こほりのかすミにて         氷(郡)の 霞にて

あるまま見せよ           あるまま見せよ

 しまのこころを           四魔の心を

 

八番 本尊 正観音 北郡山 八幡寺

 

冬の夜を わたりてをかむ     冬の夜を 渡りて拝む

 こほりやま とくれは       郡(氷)山 解くれば

おなし 極楽のミつ        同じ 極楽の水

 

九番 本尊 せんしゆ 飯岡村 飯岡寺

 

つみとかを すくふ        罪咎を 救う

 べきとや いひをかの       べきとや 飯岡の

ほとけのちかひ          仏の誓

 よもや朽せつ           よもや 朽せず

 

十番 本尊 せんしゆ 手代森 高寺

 

見おろせハ 川瀬の        見下ろせば 川瀬の

 浪ニ月そすむ           波に 月ぞすむ

そまて千入の           染まで 千しほの 

 光りなかる〃           光り流るる

 

十一番 本尊 正観音 黒川村 光西寺

 

むらさきの 雲の         紫の 雲の

 たなひく にしのそら       たなびく 西の空

弥陀の光に            弥陀の光に

 われそゆくらん          我ぞ行くらん

 

十二番 本尊 十一めん 長岡村 山谷寺

 

松枝に か〃れる         松ガ枝に 懸かれる

 つたのもミちして         蔦の 紅葉して

山谷の寺は            山谷の寺は

 にしきなるらん          錦なるらん

 

十三番 本尊 せんしゆ 彦部村 千手堂

 

まつかすむ 雲井に        松かすむ 雲井に

 せんしゆあらハれて        千手 現れて

自在天とハ            自在天とは

 これをいふらん          これを云うらん

 

十四番 本尊 正観音 佐比内村 岩谷寺

 

補陀楽は よそにハ        補陀楽は 他所には

 あらし いはやてら大悲の     あらじ 岩谷寺 大悲の

ひかり なへて 照らさん     光 なべて 照らさん

 

十五番 本尊 十一面 亀ヶ森村 谷上寺

 

池水に ひの木            池水に 檜

 さわらの うつろひて         さわらの 映ろいて 

やかみのてらハ            谷上の寺は

 鏡なるらん              鏡なるらん

 

十六番 本尊 正観音 五大堂村 五大堂

 

かす〃〃のちかひハ          数々の 誓は

 こ〃に あらはれて          ここに 現れて

川せのなミに             川瀬の波に

 月そ やとれる            月ぞ 宿れる

 

十七番 本尊 十一めん 高松村 高松寺

 

おもひきや しくわんの        思いきや 志願の

 窓に 月そすむ            窓に 月ぞすむ

あまねくてらす            あまねく照らす

 松の葉のいろ             松の葉の色

 

十八番 本尊 千しゆ 矢沢村 千手堂

 

あまつ風 雲井に           あまつ風 雲井に

 せんしゆ あらはれて         千手 現れて

みちひきたまふ            導きたまふ

 身ハほとけなり            身は仏なり

 

十九番 本尊 十一面 小山田村 石鳩岡

 

ひとかまに かりほの         一鎌に 刈穂の

 田鶴の まひあそひ          田鶴の 舞い遊び

いしにはなさく            石に花咲く

 みよとこそきけ            御世と こそ聞け

 

二十番 本尊 十一めん 種内村 種内寺

 

種を蒔 この里村の         種を蒔く この里村

 なハしろに さなへ          苗代に 早苗

とる日も               とる日も

 のとかなるらん            のどかなるらん

 

二十一番 本尊 正観音 中内村 小通寺

 

有漏路より むろちに かよふ   有漏路より 無漏路に 通う

 釈迦たにも 父母の          釈迦だにも 父母の

ためとて 経の紐とく         為とて 経の紐とく

 

二十二番 本尊 正観音 更木村 臥牛寺

 

わけのほる 天の川原に       分け登る 天の川原に

 牛そ臥 ひきおこさんと       牛ぞ臥 引き起さんと

 宵の稲妻             宵の稲妻

 

二十三番 本尊 千しゆ 高木村 高木寺

 

ミな人の あゆミを         皆人の 歩を

 はこふ たかきてら         運ぶ 高木寺

玉のうてなに            玉のうてなに

 いる身とそなる           いる身とぞなる

 

二十四番 本尊 十一面 宮ノ目村 三竹堂

 

おしなへて みたけの        おしなべて 三竹の

 ふしのそのうちに          富士(節)の そのうちに

のちのよ願ふ            後の世願う

 人そたのしき            人ぞたのしき

 

二十五番 本尊 十一面 花巻 観音寺

 

山人の菊の葉            山人の菊の葉

 なかす川くちに           流す 川口に

甘露となるや            甘露となるや

 文字のひとふて           文字の一筆

 

二十六番 本尊 正観音 黒沢尻 黒沢寺

 

ころもちは いくよを        衣地は 幾夜を

 くれて すみそめに         くれて 墨染めに

黒沢てらへ             黒沢寺へ

 参る身なれハ            参る身なれば

 

二十七番 本尊 十一めん 江釣子村 新渡部寺

 

待てよきみ 大慈大悲の       待てよきみ 大慈大悲の

 てらなれハ とみ          寺なれば 富

ふりか〃る             降りかかる

 をかミても見よ           拝みても見よ

 

二十八番 本尊 正観音 藤根村 藤根寺

 

雪解て 道すなほなる        雪解て 道すなおなる

 はるの日に ふちもえ        春の日に 藤萌え

 いつる なかき井のさと      出る ながき井の里

 

二十九番 本尊 千しゆ 山口村 千手堂

 

人ハた〃 行通ひけん        人はただ 行通ひけん

 山口の せんしゆの         山口の 千手の

ちかひ たのもしのミや       誓 たのもしの宮

 

三十番 本尊 馬頭 煤孫村 煤孫寺

 

あら玉の              あら玉の

 年さへ かへる           年さへ 代える

す〃孫の めてたく         煤孫の 目出度く

 もりし 松のミとり子        もりし 松の緑子

 

三十一番 本尊 正観音 鬼柳 大手寺

 

塵の世を すくわんための      塵の世を 救わんための

 弥陀ほとけ めくり         弥陀ほとけ 巡り

あふての 男山見る         あふての 男山見る

 

三十二番 本尊 正観音 鬼柳 川原田寺

 

南無大悲              南無大悲

 船に宝を積置て           船に宝を積置て

むかしもいまも           昔も今も

 さらにかハらし           さらに変らじ

 

三十三番 本尊 十一めん 鬼柳 本宮寺

 

よろつよの             よろず世の

 ねかひをこ〃に           願をここに

をさめおく もとミや        収め置く 本宮

 てらの月をなかめて         寺の月を眺めて

 

 

 

 

 

おひそりを おもへハおやの     負橇を 思へば親の

かたみにて ぬきおくときハ      形見にて 脱ぎ置く時は

和賀のもとミや           和賀の本宮

 

世を照らす ほとけのちかひ      世を照らす 仏の誓

ありけれハ まゐる          ありければ 参る

 わか身ハ 浄土なるらん      我が身は 浄土なるらん

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