第2 平成20年度分

 A テキスト解説

使用テキストについて

 花巻に於ける敵討

 

 原本は岩手県立図書館所蔵

(請求番号1 新・請求番号2 21-5―106)

 

萬延元年、花巻での敵討ち事件の記録

著者は不明

 その要約および後日談として「岩手の水」

という記録も同図書館にある

 

本文の概要

 

萬延元年吹張において敵討があった。

伊達藩の陪臣であった千葉某を同じく伊達藩の陪臣であった渥美某の

息子その他が討ち取ったものである。

当時としてもめずらしい事件なので色々書き物が出されたらしい。

敵討を仕掛けた側の陳述が詳細にあり、読み物としても面白い。

大部になるので、後半は省略した。なお、全文解読したものは、

「岩手の古文書」第21号に千田田鶴子氏が発表している。今回のテキスト化にあたり参考に致しました。感謝します。

 なお、昭和34年7月25日発行の谷村文化ニュースという冊子に当時の花巻市文化財調査員の山本賢三氏がこの敵討ちを紹介しているが、それによれば、事件現場は「今の鍛治町の東の突き当たりの今は双葉町へ通づる道路になっている所で、平与醤油店の蔵と、八重喜呉服店の間の所に当時豆腐の小売店をしていた女の家があって、千葉栄之丞はそこへ入婿の様になって住んでいた」とのこと。(この冊子については宮澤助五郎氏の紹介です。有難う御座いました。)

 

B 本文 

   花巻に於ける敵討

 

  萬延元年                   (1860年)

 

松平陸奥守様一族高城備後旧家中

渥美定之助親之敵御同人様一門伊達筑前

家中栄之丞事岳栄と申者花巻吹張町

ニおゐて討果候ニ付諸取斗一件

 

     四月

    

    四月廿日

一           御目付       菊池仙助

            御目付当分加使番  尾崎冨衛

  右は花巻江御用有之今日出立被 仰付

 

一           御徒目付      船越八右衛門

            同当分加      苫米地忠七

  右は前同断被 仰付

 

一 弐人        手附 牧田弓司組  御同心

一 弐人                御普代小者

 

  右之通申付也 例之通草鞋代御定目之通被下 御普代

  小者江は御給人之内拝借受取相渡也

 

一 四月廿一日九時花巻江着 直々仙台家中宿相応之処申付候様

  尤諸事御叮嚀御取扱被成候間右心得を以取斗候様 三

  町奉行照井湊江御達被成候事

 

一 千葉栄之丞死骸御検使御徒目付船越八右衛門・苫米地忠七

  被 仰付候間町奉行壱人立合可申 尤右ニ付夫々御役方とも

  申付候様湊江御達被成候事

 

一 仙台家中六人江御賄被下律之助儀仙台家直参之者故御賄

  之儀別段気を付差出候様御達被成 尤佐藤竹之助義同家中

 

  並之由申出候ニ付律之助同様御扱被成旨御達被成候處

  当人共申出ニは他家江対し候節斗苗字刀被免候者ニて

  身分も軽き者之由申出候間陪臣末席ニて御取扱ニ罷成候事

 

一 仙台家中六人之内律之助直参ニ付別宿ニ被 仰付候旨御達

  被成候処 分て御扱之儀は難有仕合奉存候得共相互力を合

  居申度候間 同宿被成下度旨強て願出ニ付 同宿申付候事

 

一 宿為締御同心弐人老名共為相詰候様 尤御物書上田

  泰作并検断折々見廻候様被 仰付候事

 

一 出火等都て非常之節 (たち)(のき)()申付置其節御給人弐人

  御同心六人為取詰候様為指図方御取次壱人相詰可申

  御役医も為相詰候様被 仰付候事

 

一 御役医弐人仙台病気等之節差向療治被 仰付候間 在宿

  罷在候様御達被成候処本科外科申付置候旨御取次申出也

  右両人之内日々見廻候様是又御達被成候事

 

一 千葉栄之丞討果候節差出候書付左之通

   私儀松平陸奥守様一族高城備後旧家中ニ御座候然ルニ

   陸奥守様一門伊達筑前殿家中千葉栄之丞と申者ニ

   十三ヶ年以前十一月八日私親渥美直見儀を及殺害其場より

   直々無行衛罷成申候処其節私儀五歳ニ罷成家跡断絶

   仕候方より追々母儀陸奥守様家中柴田民部旧臣永野

   泰助方へ後妻ニ縁組仕万事同人厄介を受成長仕父の仇

   栄之丞を打果申度数年心懸段々行先相尋此度

 

   実否一同仕 御当領ニおゐて見当候ニ付私従弟堀律之助

   伯父之仇ニ付同人并母倶ニ打果本望相遂申候 御当地を

   奉穢候次第恐入奉存候間 御国法之通御吟味被成下度

   奉願上候以上

 

               松平陸奥守様一族

               高城備後旧家中

                  渥美 定之助

  萬延元年四月十九日

 

     盛岡様

      御役人中様

 

 

一 同

   私儀仙台家中堀武次嫡子ニ御座候処同藩伊達筑前

   家中千葉栄之丞と申者十三ヶ年以前十一月八日私母之弟

   渥美直美及殺害直々無行衛罷成申候直見倅同氏定之助

 

   倶ニ復讐仕度数年之間行衛相尋申候処此度

   御当領ニ罷在候由承抜過ル八日宿元出立今日於御当地ニ

   右定之助一同敵栄之丞を打果申候 御当地を奉騒候

   次第恐入奉存候 御国法之通御吟味被成下度奉存候

以上

          松平陸奥守様家中

             武次嫡子

              堀 律之助

年 号 月 日

    前同断

  猶委細之儀は御尋之上演述可仕候

 

一 同

   私継子渥美定之助儀七歳之節より養育仕罷在候 同人

   実父渥美直美儀十三ヶ年前嘉永元年十一月八日松平      (1848年)

   陸奥守様御一門 伊達筑前家中千葉栄之丞と申者ニ被

   殺害 栄之丞儀は其場より無行衛罷成候之由 倶ニ不戴

   天と(かたき)黙止(もだし)当人九歳之節より松平陸奥守様御家中

   堀定(律の間違いか)之助へ入門 武術稽古為仕当十一歳之節より諸国

   色々探索仕り候得共行衛相知不申 右栄之丞儀普化宗

   ニ入込居候儀薄々承知仕候ニ付 (さいわい)佐藤竹之助と申者

   定之助実父直見存生中別懇之由ニ付四ヶ年以前より

   相頼同人色々穿鑿致呉候処 追々右栄之丞儀は

   御領内ニ忍居候趣承抜呉候ニ付早速差向可申処定之助

   長病(ながやみ)ニ有之 乍存 引延罷在候得共 追々本復仕候ニ付再

   探索仕候処 (いよいよ)相違無御座候ニ付此度私并妻一同連立

 

   後見母子諸共復讐為仕 本望相遂申候 御領内

   奉穢深奉恐入候 御国法之通御吟味被成下度

   奉願上候 以上

 

          仙台家中芝多民部   

                  旧臣永野左守嫡子

                      永野泰助

年 号 月  日

    前同断

 

  右三通栄之丞討留扣居候処へ不取敢為見届同処御給人

  小川七右衛門・上田泰作・大里秀左衛門・宮杜左並罷越候処 律之助

  并定之助・同人母みつ白木綿鉢巻黄絣木綿たしきを

  かき血刀携居候ニ付 拙者共為見届被申付罷越候間御身

  清免被成候様申向 水等差出候得は刀を鞘ニ納候て 何分御吟味

  奉願上候旨申候て 右書付差出候旨御城代より遠使を以

  被申遣也

 

一 右六人之者一先為休息 討果候近所へ宿申付茶并菓子等

  差出也 夫より別段宿へ為引取御賄被下也

 

   栄之丞討留候否哉頭ノ方へ定之助実父直見之

   法名相飾線香燈 銘々拝し候由 其節左之通詠し

   草へ挟置也

    讐のありかを探らんとて

     旅に出るころよめる

   (うば)捨て(すて) 山の奥をも 分きてみん 鬼の  

    臥床の ありやなしやと

 

   鬼とみば 鬼住山の (いわ)()にも 引ぬる 

    弓の 弦も絶ひかし

 

    継子の復讐を賀して

   かへそたて 幾日待にし 撫子の けふの

    いろ香を 見るそ嬉しき 

                 定之助継父

                 永野泰助

                    秀憲

 

一 六人之者住所相尋候処左之通申出也

      仙台河内中ノ坂通         桃生郡小船越村

    林崎夢想流              高城備後内家老

  一 居合術取立  堀律之助    一      安達甚左衛門

             三十歳             六十位

           

   

      芝多民部旧家中          永野泰助同居

      宮城郡福田町            高城備後旧家中

  一        永野泰助   一       渥美定之助

            五十位             十七歳

 

     城下南材木丁栄治実兄

     当時牡鹿郡石巻裏町住居

  一        佐藤竹之助

            四十二三程

 

一 四月廿一日栄之丞死骸御検使被仰付旨御達ニ付立合被

  仰付被下度旨申上候処三町奉行之内被 仰付左之通

     覚

  一          松平陸奥守様一門伊達筑前元家来

             千葉栄之丞事当時

                     岳栄

  一 年齢五十二三歳位  一 頭 俗躰

  一 天窓(あたま)後疵長サ四寸程深サ壱寸三分程

  一 後右肩より首筋へ懸壱尺程深サ弐寸六分程

  一 前右肩より咽へ懸長サ七寸程深サ弐寸六分程

  一 左内臑横疵長サ四寸六分程深サ三分程

  一 浅黄色袷着用  但古帯を〆

 

  右は松平陸奥守様一族高城備後家来渥美定之助

  親の敵之由ニて去ル十九日晩寅ノ下刻花巻於吹張丁右

  岳栄討留候ニ付私共立合御検使被仰付見届候所

   右疵ニて相果候ニ相違無御座候

 

    四月廿一日    御検使御徒目付

               船越八右衛門 印

               苫米地忠七  印

             立合

              花巻御給人三町奉行

               照井 湊   印

 

一 栄之丞持品為相改候処左之通書上差出也

 

    覚

  一 天蓋  壱  一 尺八白黒 弐本  一 同袋  弐ツ

  一 竹刀  壱本 一 袈裟   弐   一 白脚半 壱足

  一 手差  壱  一 鉢袋   三   一 浅黄単物壱枚

  一 白黒足袋弐足 一 白風呂敷 壱   一 同紐  壱筋

 

  右之通栄之丞所持之品書上仕候旨上田泰作申上候ニ付

  品物は検断ニ預置也

一 千葉栄之丞死骸塩詰ニいたし二重櫃ニて仮葬可致旨

  町奉行へ御達被成候処 松庵寺へ仮葬申付候旨町奉行

  申上也 右ニ付同寺より一札左之通

 

     覚

 

              松平陸奥守様一門伊達筑前

              元家来千葉栄之丞事 当時

  一                      岳栄

  右之者 此度陸奥守様一族高城備後家来渥美定之助

  親之敵之由ニて此度於吹張町去ル十九日晩被打留候由ニて

  拙寺境内へ仮埋被 仰付候儀 相違無御座候 仍て一札

  差上申候 以上

     萬延元年四月廿一日        松庵寺 印

 

       四戸勘太夫 殿           (町奉行)

       照井 湊  殿           (同右)

 

  右請書取上候旨三町奉行差出也

 

 

    (以下略)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一 仙台家中六人之者復讐之次第御目付衆御尋被成候ニ付

  応対宿申付右へ相招如図相列し尤律之助儀直参ニ付

  刀為持込同人先ニ御対応可申旨申入候処同人申聞候ニは御尋ニ

向即御答ニ行当候儀も有之候ては恐入候間六人一同ニ御尋被成下度

尤外〃之者之義は陪臣之者故帯釼共不仕旨申出候得共無御

遠慮旨申聞如図取計斗也一刀脇へ差置候事

 

 

六人之者応対宿へ罷越候節

宿亭主先立警固御同心

前後棒為持三人つつ相附候事  

 

   

 

御同心

警固

 

 

内廊路

 

 

 

 

 

 

 

 

 

定之助

勘左衛門

泰助

竹之助

 

勝手

六人之者一先

同処江休息

御徒目付

   同

 

 

 

 

 

御取次

三町奉行

      律之助

 

 

御目付

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(以下略)



 第1  平成19年度分
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