田野畑高校 踊組 4 全国高等学校総合文化祭

剣舞の馬 田野畑高校は、伝統的にプログラムの原稿などには力を入れている。 放送部門でもプログラム原稿でいち早く注目を集めたそうだが、 郷土芸能部門でもわたしたちのは群を抜いていた(と思う)。

学校紹介

陸中海岸国立公園の北部、岩手県田野畑村に わたしたちの高校はあります。各学年1クラス、全校生徒94名の 岩手県でも有数の小規模校ですが、これからステージに登場する28名の中には 野球部のエースも、バレーボール部のキャプテンも、放送委員会の ミスターDJもいます。客席には残りの66名が全員います。 「田野畑高校を有名にする」という生徒会活動目標のもと、三年間で数人分の 高校生活を送っているわたしたちが、本日は郷土芸能に青春をかけます。 どうぞ、最後までよろしくお願いいたします。

ではまた日記の続きを。


8月5日(土)晴れ
会場のアミューズメント佐渡でリハーサル。たった11分間しかなかったので、 踊る位置を確認したくらい。他校の様子も少し見たが、太鼓はすごかった。 午後に行われた交流会では、田野畑高校で出したクイズも登場して、 少しリラックスできた。
8月6日(日)晴れ
全国大会一日目、わたしたちの出番は明日なので、午前の部の発表を見学した。 印象に残ったのは新潟県立相川高等学校の「佐渡おけさ」と愛媛県立上浮穴高等学校の 「久万山五神太鼓」。おけさは、指の先まできれいに踊れていた。太鼓は 上手いとかではなく、ただ怖かった。鬼の面をつけて五人の男の人が太鼓を打ちながら 唸っていた。中国からゲスト出演した瀋陽(シェンヤン)市芸術幼児師範学校の民族舞踊も すごくよかった。
午後は相川中学校の体育館をお借りして練習した。 佐渡も暑くてすぐに息が切れたけど、今日はとても好調だった。
8月7日(月)晴れ
全校で新潟に来て面白いな、と思ったのは、たった94名の高校なのに、 全校で来てるのはわたしたちだけ。どこへ行っても最大多数。 こういう経験はなかった。どんなに緊張していても、すぐそばに よく知っている友達がいるだけで、不安はなくなる。 でも、本当にこの日は緊張していた。

とうとう来てしまった。発表の日。ハッキリ言って朝から体調が良くない。 眠れなかったせいもある。食事がノドを通らない、吐き気がする、笛が行方不明。 さんざんな朝。鹿のみんなは昨日から気合バリバリだけど、女子は軒並み低調。 保存会の皆さんには、練習から全国大会まで、つきっきりで指導いただいて、 この舞台袖でも「大丈夫だ」と念を押された。澤瀬先生 (去年までの顧問、現在福岡高校) も応援に来てくれた。いよいよ本番。

みんな興奮していたに違いない。太鼓も笛も、いつもよりテンポが速い。 でも演じていたわたしたちはその時気付いていなかった。客席の友達や先生に あとから指摘されたのだ。

鹿踊は順調に終わった。剣舞もすぐに始まった。そして、すぐに終わった。 本当はすぐじゃなかったんだけど、そのときはすぐだった。全体の輪踊りの中、 幕が下り、ようやくわたしたちは我にかえった。すごく息が荒くなっていた。 汗もすごかった。みんなの目から涙があふれていた。 たいちくんが笑って 「終わったゾォー! 」って喜んでいた。私も りえさんといっしょに「終わったあー! 」と 叫んだ。

閉会式。結果発表。始めに三つの学校の名前が呼ばれたが、田野畑高校は ない。もしかして、岩泉高校かも (名前が途中まで一緒だと、いろいろと困る)。 そして最後。「文部大臣奨励賞。岩手県、岩泉高校 (神様、どうかお願いします) 田野畑校」。となりに座っていた まさこはボー然としていた。 「ちょっと、やったよ! 国立だよ」。まだ信じられなくて、自分の手をつねってみた。 夢じゃない。本当にやったんだ。 まさるくんとエリカさんがステージで賞状と盾をもらっている。 まさきくんも感激の涙を流している。

「田野畑高校を有名にする」。本当に実現できた。今日は (今日も)コーフンして眠れません。


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