発信No.1

(財)日本消防設備安全センターの
消防用設備等点検済表示制度(ラベル制度)について考える

平成10年1月12日

1.この制度の目的は、およそ次のようになっております。

(1).防火対象物の関係者及び点検業者等に、適正な点検と報告を自覚認識させ、維持管理の徹底を図る。

(2).適正な点検が実施されていると認められる場合は、
1)防火管理者からの点検結果報告書の手続きの簡素化→点検票に代わり総括表・名簿一覧表のみで、各消防機関は原則として受理できる。
2)防火対象物に対する立入検査時に、点検済表示の確認だけでよしとするなどの簡素化ができる。

(3).ラベル登録者は、賠償責任保険に加入しなければならない。

(4)消防用設備にラべルを貼ることにより、点検実施についてより責任を明確にさせ万一の事故にも対応し、防火対象物の関係者の意識向上も期待できる。

   (私も関係者の一人として、大変立派な目的であると思います。)

2.この制度が作られ、今日に至るまでの経過

  平成3年5月1日(財)日本消防設備安全センターにおいて

    消防用設備等点検済表示制度普及要綱を策定
                ↓
     「消防用設備等点検制度検討委員会」で種々検討
      (財)日本消防設備安全センター内に設置)
                 ↓
平成8年4月1日から、全国統一的な運用が必要であるとして、点検済表示制度普及要綱の一部を改正し消防用設備等点検済表示制度推進要綱として、各都道府県へ通知されました。
岩手県では(財)岩手県防災保安協会によって、これまでラべル制度の普及が図られておりましたが、平成9年4月からは定められた手続きにより、会員登録がなされラべル制度が改めてスタートしたところであります。
東北地方の各県では、平成11年4月から実施するよう現在、作業が進められているようであります。

3.「ラベル制度」推進・運用の問題点

このラべル制度は、(財)日本消防設備安全センターから各都道府県の保守協会(保安協会)を通じて、点検業者へ参加を呼びかけたようなもので、いわばお上からおしつけられたという印象を与えられました。
大多数の点検業者の意見が集約された上で、実施されたものであれば納得もできます。

(1).点検業者を対象にラべル制度の説明は何度かなされました。何となく「そのようになるのかな」程度の認識はありましたが、点検業者がお互いに意見交換をし制度推進上の間題点はないかどうか、時間をかけてスタートさせるベきでありました。

(2).防火対象物の関係者に対しても、ラべル制度について充分な説明がなされておりません。このことが最大の問題点であります。
従来から委託している点検業者とのなれあい的な感覚、点検料金が安ければよいとする質よりも金額を優先する考え方が「適切な点検」につながるでしょうか。
ラべル制度の目的は、ここにあるというような啓蒙活動が必要であります。

(3).消防機関と行政(発注者側)との連絡調整もよく機能していないように思われます。ラべル制度を普及させたいのなら、まず公共の対象物から取り組むベきだと思います。ラべル貼付のための点検料金上乗せを働きかけるなど、業者だけの負担増とならないように関係者間で配慮されてしかるベきであります。
しかし、消防機関はこのラべル制度についてそこまで関与できるでしょうか。

(4).「ラべル制度」を活用し簡素化をはかろうとしても、すべての設備に異状がなく、又、防火管理者側の職務範囲すべてのことに違反がない場合のみ、ということになればほとんどそういう建物はありえないということになります。
例えば消火器2本、誘導灯1台だけというような小規模な対象物にのみ、限定されてしまうことになります。メリットはあまりありません。
最初から、従前どおりの書類の方がよいということになる訳であります。

(5).(財)岩手県防災保安協会はこのラべル制度について、それぞれの関係者に納得されるように、公平な立場で指導助言をしていただきたいと思います。

4.点検業者のこの制度Iこ対する認識と本音の声

・手続きが面倒なので、まだ登録していない。
ラべル会員となっても、メリットがないのではないか。
ラべルは、お付き合い程度に買うことにしている。
・皆がラべル会員になったから、自分も手続きした。
・ラべル代がばかにならない。すベての防対、すベての設備に貼るつもりはない。
公共の建物の設備には貼るが、民間物件のものには貼らないことにしている。
・制度の意義はわかるが、上部団体の経費にあてられるかもしれないラべル代金に納得できない。(役職員の給料になるなら面白くない。もしも、役人の天下りがあるとすればなおさらだ)
・自社でラべル作成や保険加入するよりも、協会に頼んだ方が経費的に安いかもしれないが現在も迷っている。
・点検物件も少なく、小規模防対だけなのでこの制度には参加しない。
・点検票は、従来どおりの方が「商品価値」があるので書類の簡略化は考えていない。
・防対の担当者から、従来どおりの書類の方がよいと言われた。
(設備改善について稟議する際、上司の決裁がもとめやすい)
・「ラベルを貼ることによって、点検料金が高くなるなら貼らないでくれ」と言われた。その分の経費が点検者負担になるから、あえてラべル会員にはならない。
ラべル会員になれば、ラべル購入枚数やその他のことで協会から何か言われるかもしれない。(かえって制約されるのでは?)
・点検はすべて外注しているので、この制度には加わらない。

などなど。この中の一部は私の意見でもありますが、私が同業他社の責任者又は、担当者との話の中から出たものであります。
又、間接的に聞いたことも含んでおります。
要するに、ラベル会員にはなったものの、経費負担増という現実があり点検料金への上乗せが困難な状況の中でとまどい、苦労している姿が浮かんできます。
又、一部のラべル会員からは、「制度利用」から「撤退」したいとの声も聞こえはじめているのも、事実であります。

5.この制度を活用しますか。しませんか?

 未登録の同業者の皆さん。お互いに考え方の違いや実情の違いがありますので一概にはいえないことですが、このラべル制度について今後どのように対応なさいますか。
確認の意味で、次の通知文をお読み下さい。

「点検表示済制度の活用以外の方法で、消防法に基づき適正な点検が実施されていると認められる防火対象物にあっても2.ア(※1)に掲げる扱いを行うこととして差し支えないものであること」(平成8年4月5日付消防予第61号通知)と明記されております。
つまり、適正な点検がなされておれば、ラベル非登録業者の作成した「総括表・名簿一覧表」でも受理されるということであります。(※2)
ラべル登録業者であっても適正を欠く点検をした場合には、簡素化された書類は当然受理されないということでもあり、防対関係者と点検業者、消防機関等相互の信頼関係こそが第一にされるベきことではないでしょうか。
「最初にラべルありき」的な発想(私はそのように感じている)と、これまでの経過をみて最も大切なことがとり残されているのではないかという感じがしてなりません。
国民の財産と人命を守るため、関係者はそれぞれの立場で責任を果たさなければならないと思います。
 私は、この制度に全面反対とか無視するものではありません。運用に問題点があるのではないかということを言いたいのであります。時期がくれば当社でも、登録会員となることにやぶさかではありません。

(※1)2.アの文章
2  点検済表示制度が活用される場合において、消防法に基づく消防用設備等の点検が適正に実施されていると認められるときは、次のような取扱いを行うことができるものであること。
ア  防火対象物の関係者からの消防用設備等の点検結果報告書の事務手続の簡素化を行うこと。(以下略)

(※2)(財)岩手県防災保安協会により、平成8年秋頃から配布された資料には、この部分(点検済表示制度の活用以外の方法で…)が記載された文書が見あたりません。説明不足だと思います。
あるいは、この部分が意図的にカットされているとすれば、問題ではないでしょうか。
又、多くの資料はあたかもラベル登録業者のみが書類の簡素化、その他の特典が与えられるかのごときのものが多く、客観性に欠けるのではないかと思いますが、これは私の思い違いであれば幸いです。

6.結論
 批判めいたことばかりでは前進がありません。
私は、日頃感じていることを率直に書きましたが、私にも誤解があるかもしれませんのでお気付きのこと、ご意見、ご指導をお願い致します。
多くの関係者から建設的な意見や提言があって、大多数が納得できる内容になった時が本当のスタートラインだと思います。
私は、あえてこの文書を作り、皆さまへお届け致しました。どうぞよろしくお願い致します。

(当社は今後もしばらくの間、書類の簡素化をせず従前どおりの点検票を消防機関へ提出させていただきます。)平成10年1月12日

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