発信No.4

平成10年2月

−関係者の皆さまへ発信します−

今、消防用設備等への
点検済表示(ラベル)制度推進に異議あり

 (財)日本消防設備安全センターが推進する(岩手県では(財)岩手県防災保安協会が主導)消防用設備等への点検済表示(ラべル貼布)制度にっいて、現時点での問題点などを申し上げたいと思います。
 まず、法的に義務づけられたものではありませんので、制度という表現そのものもいかがなものかと思いますが、このような制度を作り推進しなければならない背景は、一応は理解できます。
 防火対象物の消防用設備点検(結果報告提出)実施率が低いということで、平成3年頃から中央の安全センターが中心になって、関係者による「委員会」が組織されてこのような制度が推進されてきた訳ですが、私が最も疑問に思うことは、肝心の防火対象物の関係者(所有者・管理者)、特に民間の建物の関係者への働きかけやPRがあったかどうかという点であります。
例えば、各種業界団体を通じて消防用設備の点検制度を啓蒙し、このラべル制度についても事前の、又推進中である旨の広報活動があったでしょうか。
そして、2番目に点検業者に対しても個々へのアンケートの実施、又は組合組織等への啓蒙啓発が充分に行われたでしょうか。

 岩手県は全国に先がけてラべル制度活用ということで、昨年4月からスタートしましたけれども、ラべル登録の業者数が多数に及んでいるとききますが、果たしてこの制度を充分に理解し、活用がなされているのでしょうか。
点検機器・工具がなければ他社との賃貸契約を結ぶとか、資格者がいなければ他社と業務提携を結ぶとか、ラべル登録申請時の書類は中身的には体裁を整えるようになっていますが、実際の点検時にはどのような体制で行われているのでしょうか。
 書類の簡素化が可能であるとされることについても、ラべル業者は「総括表・名簿一覧表」ですべてが受理されるのではとの勘違いなど、ラべルを貼布しさえすれば適正な点検を行ったことになるといったような点検者の錯覚も考えられます。
点検業者はもっと勉強して、本来の正しく適正な点検を実施することが先であり、ラベルはその次にあるベきものだと思います。
 私ども点検業者は、防火対象物との信頼関係がなければ点検契約を結んでいただけないし、継続してその業務を委託してもらえないのは当然であります。
私どものお客様である防火対象物の関係者に対し、ラべル制度活用についてお話しますと「点検の資格をもつ者がしっかりした点検をしてくれれば、ラべルを貼っても貼らなくても、どちらでもよいこと。点検済の目印として貼ることはかまわない。消防職員の査察時にはあまり気持ちのよいものではないが、これまで通り建物内を巡回してみてもらった方が緊張感があっていいし、周囲の人間も関心が高まっていいことだから、従来通りの方がいいかも…」と、おおむねそのような返答があります。
書類の簡素化についても「消防報告は、1年毎か3年毎なので印鑑をつくことも、それほど面倒とは思わない。従来通りの方が、むしろ上司に対して予算措置を稟議する時など、通りがよいのでは?…」などどいわれます。
書類の簡素化は、所轄の消防機関が認めた場合にのみ可能であって、岩手県でも財団法人でもないことを、お互いに認識すべきであります。

 次に、(財)岩手県防災保安協会のあり方についても述べてみたいと思います。
これまでとかく問題ありとされた協会の運営について、昨年4月から本来の姿にたちかえるベくその一端として、ラべル制度をスタートさせました。
運営費の一部としてラべルの販売収益をあてることも理解できますが、丁度1年前の昨年1月〜2月にかけて、点検業者が一堂に集められその説明がなされた際、充分な意見交換、議論があったようには思いません。
この時期に、県消防防災課が介入して、協会とは別組織の岩手県消防防災設備協同組合設立を急いだ理由もよくわかりません
協会から渡された「ラベル制度」に関する資料には、点検業者向けの一方的(私は、そのように感じている)なものばかりで、広く関係者の意見とか具体的に問題点なども解説されておりません。
やはり足なみを揃えてスタートさせるためには、充分に納得できるまで論議の時間が与えられるベきで、「業者よ集まれ、そして、これに従え」的発想でこの事業が進められるとしたなら、骨のある業者の反発こそあれ、真の協力はありえないと思うのであります。
 協会のあり方に関してはまだ述べなければならないことがありますが、ある事例の事実確認を済ませて、次の機会にさせていただきたいと思います。
いずれ協会は当然ながらその立場上、点検業者には公正でなければならないことをつけ加えておきたいと思います。

 次は消防機関のこの件に関する見解、そして取扱いはどのようになっているのでしょうか。
ラべル制度が策定される以前に、防火対象物を直接所轄する消防機関の担当者(予防係や現場を査察する係など)の意見の集約があったかどうかであります。
安全センター内に設置された「消防用設備等点検制度検討委員会」としては、広く関係者において協議され策定されたということになっておりますが、全国的に末端の消防機関の職員の意見を聞いたとは思えません。
日本経済のバブル期に発想考案されたラベル制度というものが、上意下達的な流れで今日に至っているという表現は言い過ぎでありましょうか。
私は、点検業を営む一人として、この数年の成り行きを見守ってきましたが、消防機関関係者ですらラべル制度というものに対して懐疑的であるように感じております。
「ラべル制度のおかげで、書類の簡素化が進み書庫に余裕が出来、更に対象物の査察時には、ちらっと見るだけでよいから仕事が楽になる」というようなことだけで、手放しで喜んでいる消防職員はいないと確信しております。
むしろ、「この制度を進める中で、安易な取扱いになる恐れがあり、気を引き締めたい」という現場担当の職員が、意外と多いことに安心しております。

まとめとして、このラべル制度をすすめる上で大事なことは、一定期間(例えば2〜3年間)内に

  1. 防火対象物の所有者・管理者に対して、制度普及の啓蒙活動を行うこと。
    1)行政に働きかけ、公共の建物から進んで実施するように。又、予算措置にも配慮を求めるなど。
    2)民間の対象物には、時間をかけて協力を求める。
  2. 今、すべての点検業者に網をかぶせる形ではなく、業種業態によって対応の違いがあることを認めて、時間をかけて移行させるなど弾力的に行われるべきである。
  3. この制度をすすめる防災保安協会と対象物を所轄する消防機関は、ラベル登録業者であれ、未登録業者であれ公正な取扱いをするべきで、差別的なものがあってはならないことを認識すべきである。
  4. 法により実施時期が示されない限り、全国一律にスタートさせることはできないことではあるが、せめて近県地域は足並みを揃えることがいいのではないか。
  5. 要するに、まだ機は熟していない。マスコミなどを活用し環境づくりが整った段階で実施に移されるべきで、そういう努力が必要である。

以上、ラべル制度推進について疑義あることを列挙しましたが、私はあえてご批判を覚悟で関係者の皆さまにお伝えしたかったのであります。
私と同様の考えをもっている同業者も幾人かおりますが、立場上声をあげることは出来ないか、又は声をあげることが得策ではない、ということかもしれません。
しかし、私は声なき声に励まされてこの制度が、本当に関係者の納得できるものになるよう、その日まで発信を続けてまいりたいと考えているものであります。

皆さまからのご意見などお聞かせいただければ幸いに存じます。

当社は書類の簡素化をせず、従来通りの点検票を消防機関へ提出させていただきます。

平成10年2月15

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